2009年6月1日月曜日

12-2:大地に還る家/耐久性とシロアリ対策

構造の耐久性にはシロアリ対策が欠かせない

 さて、福田元総理の数少ない業績のひとつと言えるこの「200年住宅」が満たすべきポイントとして、次の7つが挙げられているので見てみよう。
1) 構造躯体の耐久性があること
2) 耐震性が高いこと
3) 内装・設備の維持監理が容易にできること
4) 変化に対応できる空間が確保されていること
5) 長期利用に対応すべき住宅ストックの性能があること
6) 住環境へ配慮されていること
7) 計画的な維持監理や保全の履歴を蓄積すること

 木造住宅に関して言えば、1)では木の柱や梁が腐朽することなくそのまま維持されることが求められている。その為にはまず、構造体となる木材が常に乾燥した状態にあるということが最も重要であるが、その上でやはりシロアリ対策が必要となる。当然、土台にはシロアリの食害に強いヒノキやヒバ、クリといった樹種が求められるが、肝心なのは、通常「赤身」と呼ばれている硬い芯材を用いなければならないということである。

 僕は、自宅のデッキテラスを作る時にお金が掛けられなかったので、CCA加工(防虫防腐薬品処理)などされていない普通の2×4材を敷き並べ、年に一度、防腐塗装を施したが、それでも大体の部材はすぐに腐食菌にやられてボロボロになってしまった。しかし、その中に一〇年経っても腐ることなくそのまま使える材が1/3くらいはあった。それらは皆、芯持材であり、一般的に耐久性がないと言われているSPF(スプルス、パイン、ファー)材であっても、ちゃんと芯持材を使えばその耐久性は全然違うことが分かり、それ以来、コストの厳しい住宅の設計で、デッキテラスを作る時には、2×4材の小口を見て芯持ち材だけを選んで使う様にしている。木の耐久性というのは、その材種もさることながら、その材のどの部分を使っているか、ということが如何に重要であるか分かるだろう。だから、以前はヒバの芯材を土台に使って、健康被害が懸念される防蟻処理を行なわないことも多かった。

 しかし、最近は在来のヤマトシロアリやイエシロアリに加えて、乾燥した木材にも食害を与えるアメリカ産のカンザイシロアリも日本に上陸して猛威を振るっているので、今はやはり何らかの防蟻処理はしておかなければならないだろうと考えている。防蟻剤には、当然、農薬由来の劇物によらない健康に配慮したものが求められるし、その効果が持続するものでなければならない。最近では、ヒバ油(青森ヒバを水蒸気蒸留して作った精油)や木酢液(炭を作る時に出る煙を冷却したもの)、あるいは、炭そのものの防虫・防腐効果を活かしたもの、シロアリに対する忌避性が強いといわれる月桃(沖縄のショウガ科の植物)から作られたものなど、天然素材から作られた、いわゆる自然系の防蟻剤も開発されている。しかし、自然系なら人体への安全性が高いと思われがちだが、原料によってはアレルギー症状を引き起こす例もあるので、採用に当たってはサンプルで事前にアレルギー反応の有無を確認しておくことも必要だろう。

 また、最近では高断熱・高気密仕様として、コンクリート基礎の立ち上がり外周部にスタイロフォームなどの発泡プラスチック系断熱材を使って外断熱とする場合があるが、シロアリは好んで断熱材の中に蟻道を作って登ってくる性向があることが知られており、パフォームガードといった防蟻剤を混入した断熱材を用いる様にするか、首都圏地域などの温暖地にあっては、基礎部分については内断熱にする、といった配慮も必要となる。

 さて、木材はシロアリの食害を受けるだけではなく、微生物によっても分解されてしまう。特にナミダダケ、ワタグサレダケ、カワラタケという木材腐朽菌によって腐ってしまう。シロアリとこれらの腐朽菌は繁殖するために必要な水分、養分、あるいは温度がほぼ共通しているため、シロアリが生息する地域では防蟻処理と防腐処理を同時に行なうことも忘れてはならない。

 しかしながら、現時点で可能なベストな防蟻・防腐処理が行なわれたとしても、200年という長期に渡って構造材が腐ったり、シロアリの食害を受けることを完全に防ぐことは難しい。その為にも、柱材はそれが土台廻りで腐ってしまった時に下部で切断して据え換える事ができるように、即ち、業界用語で言うところの「根継ぎ」ができるように、最低限4寸(120センチ)角以上のものを使う様にすべきだろう。何故なら、現在最も一般的に使われている3.5寸(105センチ)角では、当面、強度的な意味では支障がないにしても「根継ぎ」ができないからである。

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